




コ・メモリーエラーズ
Co-Memory Errors
2025
アルミニウム、アクリル絵具、岩絵具、膠、合成接着剤、和紙、写真用紙紙
2枚1組(写真・絵画)
各 175 × 263 mm
aluminum, acrylic paint, mineral pigments, glue, synthetic adhesive, Japanese paper, photographic paper
A set of two works – one photograph and one painting
each 175 × 263 mm
Co-Memory Errors
2025
アルミニウム、アクリル絵具、岩絵具、膠、合成接着剤、和紙、写真用紙紙
2枚1組(写真・絵画)
各 175 × 263 mm
aluminum, acrylic paint, mineral pigments, glue, synthetic adhesive, Japanese paper, photographic paper
A set of two works – one photograph and one painting
each 175 × 263 mm
大庭は人間の認知機能が持つ高い効率性と、その裏側に潜むエラーや曖昧さに関心を寄せ、制作活動を展開しています。近年の制作においては特に、個人のアイデンティティの核となる「エピソード記憶」—私たちの経験に基づく記憶—の可塑性と脆弱性に焦点を当て、外的刺激によって無意識のうちに絶えず変容していく記憶の性質を精緻に考察しています。
作品の起点となるのは、客観的な記録とされる写真、とりわけ誰もが目にしたことのあるような日常風景のスナップショットです。大庭は、知人から提供されたありふれた風景写真と、自身が撮影した類似の写真とを起点に、それらにまつわるエピソードを共有し、対話を重ねます。この行為は認知心理学的に記憶の錯誤が生じやすい状況を意図的にシミュレーションしたものであり、互いの体験を交換しながら、それぞれの記憶の中で新たなイメージを協働創造する実験的試みとなっています。
本作品では写真と絵画が緊密な関係性を築いて展示されています。写真作品においては、大庭が撮影した夕暮れの公園のスナップショットに、知人から提供された類似した写真がレーザーカッターによって精密に刻印されています。この二重化された視覚イメージは、わずかなずれを伴いながら溶け合い、客観的事実とは異なる経験が脳内に刻まれていく過程を比喩的に表現しています。
一方、絵画作品では、これら二枚の写真から抽出・分解された輪郭線やイメージの断片が、立体的なパーツや描線として意図的に画面上に再配置されます。これは、記憶の断片化と再構成のメカニズムを視覚的に象徴化しており、画面に施された微細な凹凸や部分的に用いられた金属顔料は、鑑賞者の視点の変化に応じて多様な陰影や光の反射を生み出します。断続的かつ抽象的な描線は、経験の痕跡を暗示しながら、一つの事象が内包する多面的な解釈可能性を喚起させます。
本作において大庭が探究するのは、体験していない出来事を体験したかのように思い出す「過誤記憶」や、他者の記憶があたかも自分のものとなる「記憶の流用」といった認知現象です。知人の何気ない写真や共有され得る時代性を帯びたエピソードを対話を通じて丹念に掬い上げ、それらの断片的イメージの集積からフィクショナルな風景を構築しています。